「いい写真とは?」という問いに対して、プロのカメラマンであっても一概に答えることは難しいかもしれません。多くの人が「心を揺さぶる写真」や「共感を呼ぶ写真」を良い写真だと考えるでしょう。確かに、共感を生む写真は多くの人に良いと評価されやすいものです。しかし、良い写真はそれだけではありません。構図や光の使い方、タイミングなど、複数の要素が絡み合い、定性的な判断が加わるため、簡単に「良い写真」を撮ることは容易ではないのです。
とはいえ、「正しい写真」を撮るための理論や知識があれば、違和感のない、そして意図が伝わる写真を撮ることは可能です。
そこで今回は、苫小牧ICTセミナー2024「【How to ICT】魅力的な写真を撮ろう|写真構図を知る」ハンズオンワークショップで紹介したジオメトリ補正についてご説明します。
レンズの遠近歪み
レンズの特性によって生じる「歪み」について説明しますが、数学や物理の話になると少し難しく感じるかもしれません。興味のある方は、こちらの「歪曲収差とは」をご覧ください。簡単に言えば、大きなものや広い範囲を撮影すると、写真の端が歪むというポイントを覚えておけば大丈夫です。
例えば、上の写真で「街灯が斜めになっている」「ビルが台形になっている」と感じる違和感はありませんか?この違和感を修正する方法が、ジオメトリ補正です。
オルソ画像
「オルソ」(Ortho)とは、「正しい」や「直線的な」という意味を持つギリシャ語由来の接頭辞で、さまざまな分野で使われています。一般的に「オルソ」は、何かを幾何学的または物理的に正しく表現することを指します。そして、オルソ画像(Orthophoto)とは、航空写真や衛星画像を地理的に正確な形で表現するために、幾何学的な歪みを補正した画像のことです。通常、地形や高度の変化、撮影時のレンズの歪み、撮影角度などにより、写真には歪みが生じますが、オルソ画像はこれらの歪みを取り除き、地図と同じように正確なスケールと位置情報を持つ画像に変換されています...
難しい話しになってきたので、実例を交えて説明します。「Google Mapsのオルソ画像」をご覧ください。よく見る航空写真地図ですが、工夫(補正)されているのがお分かりでしょうか?
全ての建物が真俯瞰構図で撮影されて(している)います。本来なら、地図の外側の建物は斜めに写るはずで壁面が見えるはずです。なぜ、このように補正されているのかは以下の通りです。
【正確な地理情報】各ピクセルが正確な地理的座標を持っており、測量や地図作成に使用できます。
【歪みの補正】レンズの収差や撮影角度による歪みが補正されており、地表を正確に再現します。
【地形効果の補正】地形の凹凸(高低差)も補正されており、山や谷などが平坦に表現されることが特徴です。
オルソ画像は、都市計画、環境調査、インフラ管理、災害対応など、正確な地理情報が求められる分野で広く利用されています。
ジオメトリ補正の手順(iPhone)
少し脱線した話しが脱線してしまったので、ジオメトリ補正の手順を説明に戻ります。前提として、iPhoneの標準写真アプリでの手順を備忘録します。アンドロイド機種やWindows PCは別途記載します。
ジオメトリ補正の手順(AndroidやWindows PC)
アンドロイド機種無料アプリ
Windows10以降に搭載されているソフト「フォト」を利用
<使い方>
「フォト」を起動
「編集と作成」>「編集」をクリック(右上の鉛筆が交差したようなアイコン)
「トリミングと回転」をクリック
「傾きの調整」で微調整、もしくは「回転」で90度毎に回転
まとめ
このように、デバイスに合わせた簡単な手順でジオメトリ補正を行うことができ、プロが撮ったようなクオリティの写真を実現することが可能です。正しい知識を使うことで、違和感のない写真をすぐに撮影できるようになる!?のです。
正しい写真とは、私たちが無意識に「こうあるべきだ」と感じる形、例えば「街灯が真っ直ぐ立っている」「地面が水平である」「四角いものは四角く」「丸いものは丸く見える」といった、違和感のない自然な姿を捉えた写真です。このような写真は、一定の理論や知識があれば撮影することが可能です。