2023年8月7日(月)より、むかわ町営のまなぶらんど図書館と穂別図書館で、胆振地域情報誌IBURI DOT SITE.が一般貸し出しを開始しました。本誌では、むかわ町法城寺の住職、舛田那由他(ますだ なゆた)氏が地域コミュニティ形成の取り組みについて記事になっています。また、記事の取材を担当したのは、衆議院議員堀井学氏の秘書を務める似鳥陽子氏であり、登場人物も取材記者も地域コミュニティに注力しており、本誌の中でも一際情熱的な内容に仕上がっています。
記事紹介
以下記事は、冊子IBURI DOT SITE.記事のリライト版です。
胆振的コミュニティの場(むかわ町編)
そこに行けば何かがある、誰かと出会える。
浄土真宗本願寺派 法城寺 舛田那由他
インタビュアー:似鳥陽子
写真撮影 :笹嶋隆廣
町を盛り上げたい、どこかにお出かけしたい、いろいろな人と出逢いたい、繋がりたい。そう思った時、現実として、都会に比べて地方都市は圧倒的に選択肢が少ない。けれども、たとえオシャレな場所は少なくとも創意工夫で場作りをしている熱く優しいオープンマインドな人がいる。例えば、胆振はお寺が元気だ。それも、男前な性格の若手住職が多い。イベント、マルシェ、コミュニティスペースなどを広い境内や本堂を活かして、思い思いの個性豊かな活動をしている。もともと、開拓民であるため、オープンマインドな気質を持っている道産子。
それがさらにIBURI民は、2018年9月に起こった、北海道胆振東部地震で東胆振の多くは大被害を受けた経験と痛みから、助け合いや人のつながりを大切にする気質に結びついているように感じる。そこに行けば何かある、誰かと出会える町のホットステーション、お寺コミュニティに遊びに行ってみた。
震災復興に尽力した、先代の背中を見て育つ地域に役立つお寺への願い
法城寺のホームページを開くとトップに書かれている「『世界一イイ感じのお寺』を目指して、 ご門徒の皆様と共に仏様の教えを聞かさせていただいております。」のメッセージが、真っ先に目に入る。その言葉の通り、コロナ前は毎月のように、セミナーや講演会、コンサートなど、バラエティに富んだ企画を開催していたお寺である。実は私もよく遊びに伺っていて、想い出やご縁も深い。苫小牧在住で、こちらの門徒でもない私がなぜご縁があるのか。
それは、2018年(平成30年)9月6日に起こった北海道胆振東部地震から、復興活動で毎年むかわに訪れている、友人である旭川・慶誠寺の石田慶嗣住職から誘われたのがきっかけだった。震災で崩れた鐘楼堂の再建に、微力ながら寄進もさせていただいている。コロナ禍で一時、イベントを自粛していた時期もあった法城寺だが、2022年に入り、寺ヨガなどのイベントが復活して、7月には、初の大規模な防災イベント「HOJOフェス」も開催された。
地元の要職を数多く務めながら地域活性に積極的に取り組み「現在、まち起こしに一番力を入れています!」と言い切る舛田那由他(5世・41歳)さんが住職に就任したのは、2005年、若干24歳という若さだった。
「胆振は若手の住職が多いですが、言い換えるとそれだけ先代が若くして亡くなっている方が多いという意味でもあります。私も父が病で早逝しています」もともとは後継者になる気はまったくなかったのだそう。それが大学時代の休み期間の帰省で、父・和麿さんを手伝い、地域の人々と深く交流するうちに意識が変わっていく。
「地域に役立つお寺でありたい」という想いは、そういった体験や、阪神淡路大震災の復興に尽力していた父の背中を見て育ったことに端を発している。「当時の父は年間半分くらいは被災地に赴いていましたので、2011年の東日本大震災では、私自身も当然のように震災復興のお手伝いに現地に行っていました」そして、その事がきっかけで、本堂の耐震建築にも目を向けるようになる。
被災からのレジリエンスが、お寺活性のターニングポイントに
「1915年(大正4年)に建立し、増改築を繰り返していた建物ですから、現代の耐震性の基準に適応するのには多額の費用がかかります。少しずつコツコツやればいいかな…と思っていたところ、檀家さんたちが、すぐに対策しようと寄付を募ってくださったんです」その大規模改修が幸いし、2018年(平成30年)9月6日に起こった北海道胆振東部地震では、鐘楼堂は崩れたものの、本堂は大きな損害がなく生き残った。この時期、全国からボランティア志望者や救援物資が全国から胆振に集まっていた。
”サ活”コミュニケーションの普及で、心身ともにととのうお寺を目指す
この日、取材に伺った時は、「寺ヨガ」が開催されていた。ほか、コーヒーセミナーや、元パティシェの副住職が手がけたスイーツお茶会など、これまで、さまざまな企画を行っている舛田住職が最近取り入れて気に入っているのがサウナである。当初はあまり興味がなかったのが、サウナーとして既に積極的に活動していた、旭川・慶誠寺の先輩住職・石田慶嗣さんにすすめられるうちにすっかり自分自身もハマってしまったのだそう。
境内に設置されたサウナには、地元の方のみならず、旅の若者など、多くの人が立ち寄り、共に汗を流して語らう。軒先にはビニールプールを活用した水風呂のほか、バーベキューセットも。「サ活という言葉が出来たくらい、近年サウナが流行っていますが、もともとお寺は身と心を“ととのえる場所ですから、サウナとすごく相性がいいと思います。この自然の中でのサ活は、むかわ町だからこそのロケーションです。
これからも、みなさんのハブとなれるようなお寺でありたいですね」本堂が残ったことで、町だけでは対応に苦慮していた、ライフラインのサポートや、被災者の心のケアを担うこととなる。「震災は大変なことでしたが、ポジティブに捉えれば、全国からこの地域のために多くの方が足を運んでくださいました。そして、そのご縁は今も続いて広がっていっています。本当にありがたいことです」