2024年10月9日(日)から11月9日(土)までの期間、全10回にわたる「苫小牧ICTセミナー2024(令和6年度苫小牧市ICT推進コミュニティ創出事業)」を無事に開催しました。延べ67名の参加者が、それぞれの事業活動にICTをどのように活用できるかをハンズオンワークショップ形式で手を動かしながら学びを深めました。参加者のICTスキルは多岐にわたっていましたが、「商品写真の撮影方法を学びたい」「Webサイトを運営してみたい」「SEOの重要性を知りたい」など、明確な目的を持って参加されていたのが印象的でした。私たち運営側も、一人ひとりの具体的なニーズに応じながらセミナーを進めてまいりました。この取り組みを通じて、地域のICTスキル向上に少しでも貢献できたことを嬉しく思います。
「目的と目標」似て非なる言葉
私事ではありますが、最近複数のプロジェクトに携わる中で、特に印象に残ったことがあります。それは「目的と目標」「プロモーションとPR(パブリックリレーションズ)」「デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーション」といった、一見似ているようで実は異なる概念についてです。
プロジェクトメンバーそれぞれがこれらの言葉を独自に解釈したまま議論を進めた結果、認識のズレが生じ、物事が円滑に進まない場面が何度かありました。この経験を通じて、共通の理解を持つことの重要性を改めて実感しました。
スコープ(範囲)を決める
「独自に解釈」とは具体的にどういうことかと申しますと、たとえば、「目的=最終ゴール」、「目標=手段」という区別があるにもかかわらず、独自の解釈によって「目標=最終ゴール(目的)」として認識してしまうケースが挙げられます。また、「プロモーション=行動変化を促すための訴求」、「PR(パブリックリレーションズ)=良好な関係の構築」という本来の意味があるにもかかわらず、これらを混同し、「プロモーション=PR」として扱ってしまうようなこともあります。このような解釈のズレが、議論やプロジェクトの進行に影響を及ぼす場面が少なくありません。
具体的事例では、SDGsは目標であり手段であり項目でありKGI・KPIであり、目的(最終ゴール)ではありません。
「持続可能な開発のための2030アジェンダ」としてSDGsが国連総会で採択されたのは2015年。具体的な17のゴール・169のターゲットを示したそのアジェンダの前半には、なぜSDGsが必要なのか、どんな決意でこの目標を掲げたのか、そしてみんなが当事者として協力してほしいことを述べた前文と、目指す世界を示した宣言があります。...この計画(アジェンダ)は、人間と地球、そして 繁栄のための行動計画です。...わたしたちは、持続可能な世界を築くためには、極度の貧困をふくめ、あらゆる形の、そして、あらゆる面の貧困をなくすことが一番大きな、解決しなければならない課題であると、みとめます。すべての国と人びとが協力しあってこの計画を実行します。わたしたちは、人びとを貧困や欠乏からときはなち、地球を守ることを決意します。...持続可能な世界へ向かうこの旅をはじめるにあたり、だれひとり取り残さないことを誓います。... *出典:日本ユニセフ協会
2015年の国連総会で全会一致で採択された「我々の世界を変革する持続可能な開発のための2030アジェンダ」の文書では、「誰ひとり取り残さず貧困をなくす」が最終ゴールであり、SDGsはアジェンダ(項目の指標)と謳っています。
前置きが長くなりましたが、本題に戻ります。ICTを活用する際に重要なのは、「ICTを使って自分がどのような状態を目指したいのか」を明確にすることです。たとえば、「ICTを使って魅力的なメニュー表を作りたい」「予約システムを導入してテイクアウト販売を実現したい」といった具体的な目標が挙げられます。
さらに、「ICTを活用して誰に何を伝えたいのか」を設定することも大切です。たとえば、「北海道外の人々に北海道旅行を楽しんでもらいたい」「子どもたちにスポーツの素晴らしさを体験してほしい」といった、明確なターゲットと伝えたい内容を考えることが必要です。
このように、「誰に」「何を」のスコープ(範囲や領域)をしっかりと設定したうえでICTを活用することで、目的達成に大きく近づくことができるでしょう。
まとめ
ICTはあくまで手段であり、それ自体を使うことが目的ではありません。もし、あなたの情熱を注ぐ事業に課題や負荷が生じているのであれば、テクノロジーを活用することで解決できるかもしれません。その一つの選択肢として、ICTを導入することを検討してみてはいかがでしょうか。皆様の事業が促進できますよう切に願っております。